空の上のプライオリティ 〜セスナとジャンボと女性管制官〜

空の上のプライオリティ 〜セスナとジャンボと女性管制官〜

「おいおい、あのジャンボ、マジで言ってんのか?」

僕が初めてその話を聞いたのは、まだ20代だった頃、アメリカで飛行訓練をしていたときのことだった。

ある日、飛行クラブの仲間とだべっていたら、ひとりが面白いエピソードを披露してくれた。それはサンフランシスコ国際空港で実際に起きた、セスナ機とジャンボ機、そして管制官のやりとり。

ただのおとぎ話じゃない。無線を録音していた人がいて、実際にそのやりとりが残っていたというから本当の話だ。


日本の空の現実

僕自身、日本でもセスナを操縦して飛ぶことがあるけど、正直言って日本の空の優先順位はキビシイ。

管制圏に先に入っていても、大型機が来れば軽飛行機は待たされる。名古屋空港なんてその典型だった。こっちは真面目に指示通り飛んでるのに、「上空待機」の一言でグルグル空を回される。

まあ、安全第一とはいえ、ちょっと肩身が狭いなって思う瞬間は正直ある。


サンフランシスコ上空での一幕

話を戻そう。

その日、世界でも有数のトラフィックを誇るサンフランシスコ国際空港に、小さなセスナ機が着陸しようとしていた。もちろん、世界中のエアラインが発着する超多忙な空港だ。

地上の航空無線を聞いていたという仲間が言うには、その時も空港は大混雑。

そこへ、あのルフトハンザのジャンボが近づいてきた。どうやらロングフライトの疲れからか、パイロットも早く地上に降りたかったらしい。

でも、そのとき既にセスナが管制圏に入っていて、アプローチの最中だった。


管制官 vs ジャンボ

まず、管制官がジャンボ機に指示する。

「スピードを落としてください。セスナ機に先に着陸させます」

これ、普通の判断。安全最優先で、先に進入している航空機が優先。航空法にも明記されているし、基本中の基本。

ところがジャンボのパイロット、納得がいかない。

「こちらが先に着陸したい。セスナを回避させろ」

おいおい、マジかよ?と思うけど、まあ疲れてたのかもしれない。

しかし、管制官は引かない。

「セスナに優先権があります。スピードを落として待機してください」

ジャンボ:「俺たちは長旅のあとだ。先に降ろしてくれよ!」

もうね、我がまま言いたい放題(笑)。

でもここからがすごい。


Just Show Me $20,000 Turn

管制官は冷静にセスナに着陸許可を出し、次にジャンボへ伝える。

「ルフトハンザ○○便、ゴー・アラウンド(着陸のやり直し)」

その瞬間、無線がザワついたらしい。

ジャンボ機のパイロットが怒って返信。

「ジャンボがUターンしたら1万ドルもかかるんだぞ!!」

……まあ、燃料代や空域の再調整、時間コストを考えればそのくらいかかるのかもしれない。

でも、それに対する管制官の返しが最高だった。

「Just Show Me $20,000 Turn」 (じゃあ、2万ドルのターンを私に見せてちょうだい)

最高かよ、そのセンス。


サービスとは毅然さ

このときの管制官は女性だった。

しかもめちゃくちゃ落ち着いた声で、終始冷静だった。

僕はこの録音を聴いたとき、本当にしびれた。かっこいいなぁって。

アメリカの空って、自由で、でもルールには忠実で、しかも誰に対してもフェアなんだなって思った。

ジャンボだろうがセスナだろうが、先にアプローチしていれば優先。でなければゴーアラウンド。それだけの話。立場とか格じゃなくて、順番と安全。

その基本を守るからこそ、空の秩序は保たれてる。


まとめ:空の上では、全員が対等だ

僕は今でも、飛行機に乗るたびにこの話を思い出す。

空の上では、肩書きも立場も関係ない。

小さなセスナだって、ルールを守ればちゃんと優先される。

それを守る管制官がいる限り、空は安全で、そして美しい。

あのサンフランシスコの女性管制官、本当にありがとう。

いつかまた、その空を飛びたいと思う。

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