覚悟が人を変える──機長昇格と4本線の重み

覚悟が人を変える──機長昇格と4本線の重み

先日、ある旧友と再会する機会があった。

彼は某エアラインの現役パイロット。かつては副操縦士として日本全国を飛び回っていたが、ついに数年にわたる厳しい昇格訓練を終え、晴れて「機長」となったのだ。

あの肩に光る4本線。

誰もが知る通り、航空機において4本線は機長の証。 その姿は凛としていて、何かが明らかに変わったことを感じさせた。

けれども、その日、最もまぶしく光っていたのは肩のラインではなかった。

そう。彼の目に宿った確かな自信と覚悟こそが、何よりも輝いて見えたのだ。


昇格訓練のリアル──技術だけでは機長にはなれない

数年前から始まったという機長昇格訓練。

世間からは「エリートの証」と見られがちだが、その過程は決して甘くない。 連日のフライトシミュレーター訓練、教官とのブリーフィング、フライト中の判断ミスに対する厳しい指摘……。

彼が訓練中だった頃に会ったときの姿を思い出す。 目の下にはクマ、顔には疲れがにじんでいた。まるで精神的に削られていくかのようだった。

私は、飛行機好きの一人として、純粋な興味で昇格訓練の詳細を聞いた。 彼は語ってくれた。

「技術面は時間をかければ誰でもある程度は身に付く。けれど、機長に求められるのはそれだけじゃない。求められるのは、“覚悟”なんだ。」


「覚悟」とは何か──経営にも通じる精神性

私はこの言葉に衝撃を受けた。

“覚悟”──この二文字には、重く、深い意味がある。

機長とは、すなわちフライトの最終責任者。 百人を超える乗客の命を預かり、天候、機材トラブル、予期せぬ事態すべてを前に、自分が決断しなければならない。

たとえ副操縦士が助けてくれようと、最終的な判断は機長に委ねられるのだ。

彼は言った。

「コックピットで何か問題が起きたとき、自分の顔色を見て副操縦士やキャビンクルーは動く。そのときに、迷いや不安が顔に出てはいけない。だから覚悟を持たなきゃいけないんだ。」

この話を聞きながら、私はふと、自分の仕事にも通じるものがあると思った。

たとえば、経営者。 経営者もまた、組織のトップとして、多くの人を率い、結果に責任を持つ立場だ。 未来が読めない時代、不確実性だらけの社会の中で、自分の決断が社員の人生を左右する。

そんなときに必要なのもまた、テクニックや知識だけではない。 “覚悟”なのだ。


オーラは肩書きではなく、内面からにじみ出る

機長になった彼と久しぶりに食事をした。

制服姿で現れた彼は、以前と何ら変わらぬフレンドリーさを持ちながらも、そこには“気迫”があった。

昔の彼と、今の彼。

比べてみると、何かが明らかに違う。 話す言葉に重みがあり、表情にも余裕がある。 一歩引いて周囲を見渡す力。

それは単に“技術が上達したから”では説明がつかない。

彼の中に宿ったもの、それが“覚悟”だった。

「絶対にこのフライトを無事に終わらせる」

その思いが日々の行動や言葉、雰囲気に現れ、人に安心感と信頼感を与える。

それは、何も空の世界に限った話ではない。 どんな分野でも、“覚悟”を持って何かに向き合う人間は、自然と周囲を引き寄せ、信頼されるのだと思う。


最後に──あなたにとっての「覚悟」は?

この再会は、私にとっても一つのターニングポイントとなった。

自分の仕事において、人生において、何に覚悟を持って臨んでいるだろうか?

逃げずに、迷わずに、「自分が責任を取る」という精神で毎日を生きているだろうか?

彼の放つオーラを見ながら、私は自分自身にも問いかけた。

そして、再会の最後に交わした一言。

「また会おう。お互い、自分の“空”をきちんと飛び続けような。」

今もその言葉が、静かに胸に残っている。


覚悟は、人を変える。 そして覚悟は、人を輝かせる。

今日も自分の“フライト”を、覚悟を持って飛んでいこう。

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